2021年会社法改正 何がどう変わったのか?

会社法

改正会社法が2021年3月1日に施行されました。変更内容は多岐にわたり、大企業だけでなく中小企業にも対応が求められる変更がありますので、主な改正ポイントをしっかりと押さえておきましょう。

会社法改正のポイント

「会社法」は、会社の設立、組織、運営などについて定めた法律で、2006年に施行されました。今回の改正目的について、法務省が発行しているパンフレットには、下記のように記載されています。

会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図ることを 目的とするものです。これにより、日本企業のコーポレート・ガバナンスが更に向上し、日本企業の競争力や日本企業に対する内外の投資家からの信頼がより高まり、ひいては、日本経済の成長に大きく寄与するものと期待されています。

法務省「パンフレット 会社法が改正されます」

簡単に言うと、「日本企業のコーポレート・ガバナンスを強化することで、国際的な競争力の向上や、国内外から投資の呼び込みにつなげ、日本経済を成長させよう」ということです。

「コーポレート・ガバナンス」とは、企業経営が公正な判断のもとで適正に運営されるように、監視・監督を行う仕組みのことで、日本語では、企業統治と訳されています。

会社の経営は経営者や取締役が運営していますが、会社には株主、顧客、従業員、取引先といったさまざまな利害関係者(ステークホルダー)が関わっています。そうしたステークホルダーの利益を守るため、経営陣が自分たちの利益のみ追求しないよう監視体制を強めようというのが、コーポレート・ガバナンスの考え方です。

近年、企業の不祥事や不正が相次いだことで、一部の経営陣の利益のみ追求するような経営のあり方が問題視され、ガバナンスを強めるルールの必要性が強く求められていました。今回の改正内容はその要請に応えたものと言えます。

とくに注目すべき改正ポイントは、株主総会と取締役に関するルールの変更です。

以下では、具体的にどのような改正がなされたのか、「株式総会に関するルール」、「取締役等に関するルール」、「その他のルール」に分けて概略をまとめました。それぞれの詳細については、別途、該当記事を参考にしてください。

株主総会に関するルール

(1) 株主総会資料の電子提供制度の創設
定款の変更を行えば、株主総会に関する資料(株主総会参考書類、計算書類・事業報告など)を、株主の個別の同意がなくても、インターネットで提供できるようになります。2022年中の施行を予定しています。

(2) 株主提案権の制限
濫用的な株主提案権の行使を制限するため、株主があらかじめ株主総会に提案できる議案数は1人当たり10個までとなりました。

(3) 議決権行使書面の閲覧制限
株主による議決権行使書面の閲覧・謄写請求を拒絶することができる場合が明確化されました。

取締役等に関するルール

(1) 取締役の株式報酬
取締役の報酬等として、株式または新株予約権を付与する場合、定款または株主総会の決議により、株式または新株予約権の数の上限等を定めることが義務付けられました。

(2) 取締役の個別報酬決定方針を定める義務
これまで個々の取締役の具体的な報酬額の決定は、取締役会に一任されてきましたが、適正な報酬かどうかわかりにくいという批判が上がっていました。そこで改正法は、上場会社において、定款や株主総会決議で取締役の個人別報酬が具体的に定められていない場合は、取締役会でその「決定方針」を定めなければならないとしました。

(3) 会社補償
取締役らが株主代表訴訟等で責任を問われたときに生じる弁護士費用等の全部または一部を、会社が補償できる、会社補償のルールが整備されました。

(4) D&O保険(Directors & Officers Liability Insurance・役員等賠償責任保険契約)
会社が掛け金を負担し、取締役ら役員が職務執行に関し損害賠償責任を負う場合に、その損害賠償金を保険金で補填する保険契約について、明確なルールが定められました。

(5) 社外取締役の設置義務
監査役会設置会社である上場企業等において、社外取締役を1人以上置くことが義務付けられました。

(6) 取締役への業務執行の委託
一定の要件を満たす場合、社外取締役に業務執行を委託できるようになりました。

その他のルール

株主総会と取締役等に関するルール変更以外にも、下記のような変更がなされました。

(1) 株式交換制度の新設
株式を対価として子会社化を行える手続きとして、「株式交換制度」が新設されました。従来の同様の手続きより制約がなく、利用しやすくなります。

(2) 社債管理補助者を置く制度の新設
従来の社債管理者より低コストで利用しやすい、社債管理補助者を置くことができる制度が新設されました。

(3) 成年被後見人等の取締役等の欠格事由の見直し
成年後見人、被保佐人の欠格事由条項を削除し、取締役等に就任できるようになりました。

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