「顧客満足度1位」や「売上No.1」の表示をする際の注意点とは?

会社法

「No1」や「トップ」という表示は、消費者に対して強いアピール力があるため、企業のHPや広告などでよく使われています。しかしそうした「No.1表示」は、当然ながら、客観的な調査結果に基づいたものでなくてはなりません。

先月18日、 (一社) 日本マーケティング・リサーチ協会 (JAMA) が、「非公式な「No.1調査」への抗議状」と題し、No.1を取得させるという結論ありきで、調査対象者や質問表を恣意的に設定する調査の実施を請け負う業者に対し、厳重抗議を行いました。

同協会が問題視したような、不正な調査に基づく「No.1表示」は、客観的裏付けに欠けるため、どんなに上手くごまかしたつもりでも、違反を問われる可能性はなくなりません。

今回は、不正な「No.1表示」をしたらどうなるか、また、不正な表示をしないために何を守ればよいのかについて、確認していきます。

事実に反する「No.1表示」をしたらどうなる?

公正取引委員会は、2008年に公表した「No.1表示に関する実態調査報告書」において、

「No.1表示」が合理的な根拠に基づいておらず事実と異なる場合には、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となる

としています。

景品表示法の違反が認められると、消費者庁から「措置命令 (再発防止策の実施など) 」が行われ、さらに課徴金 (違法商品・サービスの売上額の3%) の納付を命じられることになります。

「No.1表示」が違法にならないために

では、「No.1表示」が景品表示法に違反しないためには、どうすればよいのでしょうか?

上記の「No.1表示に関する実態調査報告書」において、No.1表示が不当表示にならないために、以下の2点を満たす必要があるとしています。

① 客観的な調査に基づいていること

② 調査結果を正確かつ適正に引用していること

次に、「客観的な調査」とはどのような調査か確認したうえで、「望ましい表示」について解説します。

「客観的な調査」と「望ましい表示」とは

上記の報告書によると、No.1表示が「客観的な調査」に基づいているといえるためには、下記の方法で調査する必要があります。

① 関連する学会や産業界において一般的に認められた方法、または、関連分野の専門家の多くが認める方法

② 社会通念上および経験則上、妥当な方法

そのような調査に基づいたうえで、望ましい表示として次の4つが挙げられています。

(1) No.1表示の対象となる商品等の範囲を明瞭に表示すること

(NG例:「お客様満足度○○部門No.1」(注:○○は化粧品の種類、表示物は化粧品の通信販売に用いられているもの)(実際には、化粧品全体の○○部門における調査結果ではなく、通信販売される化粧品の○○部門における調査結果だった)

(2) 調査対象となった地理的範囲を明瞭に表示すること

(NG例:「施術件数実績地域No.1」、「地域No.1の合格実績」)

(3) 直近の調査結果に基づき、調査対象となった期間・時点を明瞭に表示すること

(NG例:「オール電化住宅施工棟数5年連続○○県下No.1」)

(4) 根拠となる調査の出典を具体的かつ明瞭に表示すること (ある調査会社が行った調査結果に基づくNo.1表示の場合には、調査会社名および調査の名称を表示する、など)

おわりに

「No.1表示」はインパクトが強く効果的であるがゆえに、信頼性が厳しく問われます。もし不当な表示を行ってしまえば、法律違反になるだけでなく、消費者の信頼を著しく損ねてしまいます。客観的な調査を行ったうえで、正しい表示を行うよう、広告表示に関する社内の管理体制をしっかりと整備しておくことが肝心です。

監修 : 板井 貴志 (フォーサイト総合法律事務所 パートナー弁護士)

金沢大学法学部・東北大学法科大学院卒業。
スタートアップ企業や上場企業を中心に、AI、Fintech、SaaS、WEB3.0、ロボティクス、EC、システム/アプリ/ソフトウェア取引、個人情報・ビッグデータ、通信・セキュリティなどのテック分野での助言を行う。
特に、スタートアップ企業やIPO準備企業に対する資金調達支援、ビジネスモデル適法性審査、知財活用などの助言実績多数。
外部役職として、社外監査役や各種アクセラレーションプログラムのメンター等。

 

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