ビジネスにデータを利用しやすくなる! 改正個人情報保護法で新設された「仮名加工情報」制度とは?

会社法

2022年4月施行の改正個人情報保護法では、「個人の権利強化」や「個人データ漏えいに関する報告義務化」など、企業の責務を重くする方針がとられていますが、一方で、企業のイノベーションを促進するために、一部の規制が緩和されています。それが今回説明する「仮名加工情報」制度の新設です。

「仮名加工情報」とは?

「仮名加工情報」とは、「個人情報から氏名等を削除するなどして、他の情報と照合しない限り、個人を識別できないようにした情報」のことです。

AIの普及によりビッグデータの活用が進展しましたが、個人情報をそのまま利用することはできないため、法律が定める方法で「加工」する必要があります。しかし、ビッグデータは加工すればするほど、情報としての利用価値は下がってしまいます。そこで、「データとしての利用価値」を保ちつつ、個人の権利を侵害しない程度の加工をする方法として、今回の法改正で「仮名加工情報」制度が創設されました。これにより、例えば、顧客の購買データを分析して商品開発につなげるなど、今まで以上にビッグデータを活用した取組みが促進されるものと期待されています。

「匿名加工情報」とのちがい

「仮名加工情報」と同じようにデータ利活用を進めるものとして、「匿名加工情報」というものがあります。

「匿名加工情報」とは「個人情報を特定の個人を識別することができないように加工し、かつ、加工前の個人情報を復元できないようにした情報」のことです。

仮名加工情報とのちがいは、「元の個人情報を復元できるかどうか」にあります。

匿名加工情報は、元の個人情報を復元できないレベルまで加工する必要があるため、基準がかなり厳格であるほか、どこまで加工すればよいのか曖昧な点もあったため、一般的な企業にとっては作成が難しい上に、ビッグデータとしての活用度もいまいちという問題がありました。

そこで登場したのが「仮名加工情報」です。匿名加工情報よりも何を削除すべきか明確であるため作成が容易で、具体的な情報を残せるため、AIの学習・分析をより緻密に行うことができます。さらに、漏えい時の報告義務や、個人からの開示・利用停止請求対応も不要という特徴があります。

「仮名加工情報」の注意点

「仮名加工情報」は、他の情報と照合すれば、特定の個人を識別できる可能性があるため、個人の権利侵害のリスクが残されています。そのため、個人を識別する目的で他の情報と照合することが禁じられている点に注意が必要です。あくまで、「個人を識別しません」という条件を守った場合のみ利用が許されています。

また、「匿名加工情報」が、本人の同意なしに第三者提供ができるのに対し、「仮名加工情報」は第三者提供ができません。有用性の高いデータを活用できるのと引き換えに、会社内部における利用に限定されることになります (ただし、委託と共同利用は可能です) 。

また、法令に基づいた場合、利用目的を変更できるようになるため、過去に収集した個人情報を別の目的に利用することも可能になりますが、変更のたびに公表する必要がある点にも留意しましょう。

おわりに

「仮名加工情報」を扱うには、個人情報保護委員会の定める規則に従った加工を行い、安全管理措置義務を守る必要があるなど、さまざまな注意点があります。禁止事項もあるため、必要に応じて知見のある専門家に相談しながら、利用を検討することをおすすめします。

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