新たな在留資格「特定技能」とは? 押さえておきたい基礎知識

外国人雇用

2019年4月1日、改正入管法が施行され、新しい在留資格「特定技能」が創設されました。

特定技能は、「人材を確保することが困難な状況にある14分野」において、「一定の技能と日本語能力」を持ち即戦力となる外国人を受け入れるために新設された在留資格で、中小企業を中心とする深刻な人手不足を解消することを目的としています。

これまで国は、高度で専門的な知識や技術を有する外国人労働者のみを受け入れる方針をとっていましたが、「特定技能」の新設により、初めて単純労働を含む幅広い職種における外国人雇用に門戸が開かれました。

以下では、「特定技能」はどのような経緯で創設され、どのような特徴を持つ制度なのか、また、「特定技能」の資格を持つ外国人を受け入れるために必要となる基準について、説明します。

「特定技能」創設の背景と現状

特定技能創設の背景にあるのは、国内の特定の分野における深刻な人手不足です。

我が国の15歳から64歳までの生産年齢人口は、2017年の7596万人 (総人口に占める割合は約60%) から、2040年には5978万人 (約54%) まで減少すると推計されており、増加の見込みはまったくありません。こうした現状に鑑みて、人材不足がとくに深刻な分野で即戦力となる外国人材を受け入れようという考えのもと創設されたのが、「特定技能」です。政府は2019年からの5年間で最大34.5万人の受け入れを見込んでいますが、2021年8月末時点での「特定技能1号 (後ほど説明します) 」における在留外国人数は、新型コロナの影響もあり、35031人に留まっています。

「特定技能」の種類

特定技能は、相当程度の知識や経験を持つ外国人向けの「特定技能1号」と、より熟練した技能を持つ外国人向けの「特定技能2号」があります。以下、それぞれについて説明します。

(1) 特定技能1号とは

特定技能1号は、「相当程度の知識または経験」を必要とする技能を要する業務を行う外国人向けの在留資格です。とくに訓練を受けなくても、ある程度の業務をすぐに行える水準にあることが求められます。

特定技能1号を取得するには、分野ごとの「技能試験」と「日本語能力試験」に合格するか、「技能実習2号 (技能実習のうち、2・3年目の活動を行う外国人に与えられる) 」を良好に修了する必要があります。在留期間は最大5年となっており、1年、6ヶ月または4ヶ月ごとの更新が必要です。家族の帯同は基本的に認められていません。

(2) 特定技能2号とは

特定技能2号は、特定産業分野に属する「熟練した技能」を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、1号の修了者が試験を合格することで移行できる資格です。

現在は「建設」と「造船・船舶工業」の2分野のみ、1号からの移行が可能となっています。

3年、1年または6か月ごとの更新を行えば、無期限で日本に在留することができるため、10年間の日本在留が要件となる「永住権」を取得できる可能性があります。こちらは条件を満たせば、配偶者と子供の帯同が認められます。

「特定技能」の対象職種

特定技能を取得できる分野は、今のところ以下の14種類に限定されています。これらは、「生産性の向上や国内人材確保のための取り組みを行ってもなお、深刻な人手不足である」と認められた分野です。

(1) 介護
(2) ビルクリーニング
(3) 素形材産業
(4) 産業機械製造業
(5) 電気・電子情報関連産業
(6) 建設
(7) 造船・舶用工業
(8) 自動車整備
(9) 航空
(10) 宿泊
(11) 農業
(12) 漁業
(13) 飲食料品製造業
(14) 外食業

なお、上記はあくまで「特定技能1号」を取得できる職種であり、「特定技能2号」に移転できるのは、前述の通り、現時点で「建設業」と「造船・舶用工業」の2種類のみとなっています。

「特定技能外国人」を採用する方法とは?

では、実際に「特定技能外国人」を採用したいと思ったら、どうすればよいでしょうか?

特定技能で在留する外国人を雇用する会社は「特定技能所属機関 (受け入れ機関) 」と呼ばれ、下記のような基準をクリアしている必要があります。

・法令を遵守している会社であること (5年以内に入管法や労働法などの違反がない、など)

・外国人と結ぶ雇用契約が適切であること (報酬額が日本人と同等かそれ以上、など)

・外国人への支援体制と支援計画が適切であること (日本語学習の機会を提供する、など)

さらに、下記の義務を果たす必要があり、これらを怠ると、外国人を雇用できなくなったり、出入国在留管理庁から指導、改善命令等を受けたりする可能性があります。

・外国人と結んだ雇用契約を確実に履行する (報酬を適切に支払う、など)

・外国人への支援を適切に実施する (ただし、登録支援機関に委託が可能)

・出入国在留管理庁への各種届出を行う

おわりに

日本の喫緊の課題である人手不足解消の切り札として期待される「特定技能」。この制度を有効活用していけるかどうかは、今後の日本経済の行方に大きく関わってくると思われます。受け入れを検討する際には、守るべき基準や義務をしっかり確認した上で、外国人労働者が安心して働き続けることができるよう、労働条件や職場環境を整えることが大切です。

<参考資料>

厚生労働省「新たな在留資格「特定技能」について 」 https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000485526.pdf

法務省「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」 https://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf

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