中小企業も知っておくべき、2021年施行「改正会社法」のポイント:④社債管理補助者の創設等

会社法

今回の改正法は、取締役と株式総会に関するルールが主な変更内容ですが、それ以外にもいくつか実務に影響のある改正がなされています。以下、確認しておきましょう。

社債管理補助者の創設

社債を発行する場合、会社は原則として「社債管理者」を定め、社債権者のために社債管理を行うことを委託しなくてはなりません。社債管理者とは、社債を購入した投資家 (社債権者) を保護するために置かれるもので、例えば、債権の発行会社の経営悪化によって、元本の返済に問題が生じた場合などに対処してくれます。

しかし実際のところ、コストがかかる等の理由から、社債管理者を置かずに社債を発行する場合が多く、社債権者の保護の面から問題視されていました。

今回の改正で新たに「社債管理補助者」が創設されました。「社債管理者」と比べて権限や裁量が限定されていますが、社債権者の保護を図るための低コストで利用しやすい制度として、活用されることが期待されています。

なお、社債管理者になることができるのは、銀行や信託会社などに限られていますが、社債管理補助者には、弁護士や弁護士法人もその資格を持っています。

取締役らへの責任追及訴訟における和解

株主代表訴訟に会社が参加した場合や、会社自身が取締役らに責任を追及する訴訟を起こした場合に、会社と取締役等が和解する場合があります。その和解において、会社が不当に取締役らに有利な和解をするおそれがあると指摘されていました。

そのため改正法では、和解には各監査役の同意を得なければならないと定められました (監査等委員会設置会社では各監査等委員、指名委員会等設置会社では各監査委員) 。

これは上場会社だけでなく、監査役を設置している会社 (監査役の監査範囲を会計に限定している会社を除く) であれば、非上場会社にも適用があります。

成年被後見人等の取締役等の欠格事由の見直し

改正前の会社法では、成年被後見人や被保佐人は取締役や監査役などになることができないとされていましたが、この条項 (欠格事由条項) が削除され、取締役等に就任できるようになりました。

これは、成年後見人制度が理念とするノーマライゼーションの観点から見直しが図られたものです。

ただし、成年後見人が取締役等に就任するには、被後見人の同意を得たうえで被後見人に代わって就任承諾することが必要であり、被保佐人が取締役等に就任するには、保佐人の同意が必要となります。

なお、現在取締役等である者が、後見開始の審判を受けて成年被後見人となった場合には、取締役等を退任しなければなりません。それは会社と取締役等の関係は委任契約であり、「後見開始の審判」は委任の終了事由にあたるためです。

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