外国人の在留資格「特定技能」について、出入国在留管理庁が事実上、在留期限をなくす方向で調整を進めていることが分かりました。2022年3月には正式決定がなされる見込みです。
なぜ今、そのような変更が行われようとしているのでしょうか?
以下では、具体的に何がどう変わるのか確認するとともに、どのような課題があるのかについて解説していきます。
特定技能とは?
まずは「特定技能」とはどのようなものか確認しておきましょう。
特定技能とは、2019年4月に導入された新しい在留資格で、外国人に人手不足が深刻な業種14分野での就労を認めるものです。日本の深刻な人手不足解消のため、単純労働にも従事できる外国人材の受け入れを推進する制度として創設されました。
なお、特定技能の資格を得るには、技能検定試験と日本語能力試験の合格、または、技能実習2号 (3年間) を良好に修了している必要があります。
出入国在留管理庁によると、今年9月末時点で約3万8千人の外国人が「特定技能」の資格で働いており、とくに飲食料品製造業、介護、建設などの分野で増加しています。国別上位5ヶ国は、ベトナム、フィリピン、中国、インドネシア、ミャンマーの順になっています。
最近では新型コロナの影響で技能実習終了後に帰国できなくなった外国人が、在留資格を特定技能に切り替えて日本で働き続けているケースが多く見られます。
より詳しい制度説明はこちらをご覧ください。
何がどう変わる?
これまで「特定技能」の在留期限は5年間となっていましたが、この期限を撤廃し、在留資格を何度も更新し続けることで、無期限に働くことが可能になります。また、家族を呼び寄せて一緒に暮らすことも認められます。
「在留資格の更新を何度でも認める」ことで、「無期限に働ける」ことにつながり、一定の条件を満たせば永住権を獲得できる可能性もあります。
もちろん、一定期間ごとに更新が必要となるため、無条件で永住を認めるわけではありませんが、制度として「在住10年を超える熟練労働者には永住権取得を認める」ため、実質的には移民を認めたといえるでしょう。
なぜ変更することになったのか?
「特定技能」の創設により、海外人材の登用機会は広がりましたが、それでも14分野のうち12分野は最長5年しか就労できないため、人手不足に悩む業界からは、「もっと長期間の人材確保が見込める制度としてほしい」という要望が高まっていました。
また、コロナ禍で新たな外国人材の受け入れが滞っているなかで、必要な労働力の確保が急務となっており、「長期就労可能」という点をアピールすることで、より多くの外国人労働者を呼び込む狙いもあるとみられます。
制度変更の課題
大きな課題の一つが、受け入れ体制の整備です。
外国人労働者に関しては、現在ですら労働環境や賃金、人権侵害をめぐるトラブルが少なからず起きており、受け入れ体制の不備が目立ちます。特定技能で働く人が増えれば、本人だけでなく、その配偶者や子どもの生活支援についても、制度や仕組みを整備していく必要があるでしょう。
また、特定技能には、公的な第三者機関が受け入れ企業を検査したり、多言語で相談に応じたりする制度がないことも問題視されています。そのため、まずは制度面の構築と充実が急務になると考えられます。
おわりに
今回の制度変更は、外国人に永住の可能性を拓くもので、外国人労働者受け入れ政策における一つのターニングポイントになると思われます。
即戦力となる外国人の長期雇用を検討しているのであれば、2022年度の制度変更までに、情報収集や受け入れ環境の整備などを進め、人手不足の解消に役立ててみてはいかがでしょうか。
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