外注する前に把握しておきたい「下請法」の基礎知識 ③発注者の禁止事項

下請法

大きな会社 (親事業者) が小さな会社や個人事業主 (下請事業者) に仕事を発注する場合、その力関係から、発注者側が受注者側に不利益を押し付けるケース、いわゆる「下請いじめ」が起こり得ます。

下請法はそれを防ぐため、発注者側に守るべき義務を課したり、禁止事項を定めたりしています。

今回は、発注者側に課せられた11の禁止事項を見ていきましょう。

11の禁止事項

以下、11の禁止事項を具体的に確認していきます。

(1) 受領拒否の禁止

下請事業者に責任がないのに、注文した物品等の受領を拒むことは禁止されています。

例えば、倉庫に在庫がたくさん残っていることを理由に注文をキャンセルし、受取りを拒むことはできません。

(2) 下請代金の支払遅延の禁止

下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないことは禁止されています。下請事業者は、期日までに支払いを受けなければ資金繰りがつかず、経営困難になるおそれがあるためです。

例えば、納品された製品の検査に3ヶ月かかったため、支払いが納品後60日を超えてしまったような場合は、下請法違反となってしまいます。

(3) 下請代金の減額の禁止

下請事業者に責任がないのに、あらかじめ定めた下請代金を減額することは禁止されています。

例えば、カスタマーサポート業務を依頼した場合、受付件数が少なかったことを理由に減額することはできません。

(4) 返品の禁止

受け取った品物を返品することは禁じられています。

例えば、発注側の製造計画に変更が生じたことを理由に、不要になった部品を下請メーカーに返品することはできません。

(5) 買いたたきの禁止

類似品等の価格または市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めることは禁じられています。

例えば、大量の発注をすることを前提として下請業者に見積もりをさせ、その見積価格の単価を少量の発注しかしない場合の単価として下請代金の額を定めることはできません。

(6) 購入・利用強制の禁止

親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させることは禁じられています。

正当な理由がないのに,親事業者の指定する製品や原材料等を強制的に下請事業者に購入させたり、サービス等を強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせたりすると購入・利用強制となり、下請法違反となります。

(7) 報復措置の禁止

下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会または中小企業庁に知らせたことを理由として、その下請事業者に対して、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすることは禁じられています。

(8) 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすることは禁じられています。

親事業者が有償で支給した原材料などの対価を早期決済すると、下請事業者の受け取れる下請代金の額を減少させ、下請事業者の不利益になるおそれがあるためです。

(9) 割引困難な手形の交付の禁止

一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することは禁じられています。

割引困難な手形とは、繊維業は90日、その他の業務は120日を超える長期の手形をいいます。

(10) 不当な経済上の利益の提供要請の禁止

下請事業者から金銭,労務の提供等をさせることは禁じられています。

例えば、下請事業者の従業員に無償で業務を手伝わせることはできません。

(11) 不当な給付内容の変更および不当なやり直しの禁止

費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせることは禁じられています。

例えば、担当者が異動になったことを理由に、費用を負担せずに発注内容を変更することはできません。

禁止事項に違反するとどうなる?

禁止事項に違反した場合は、公正取引委員会によって 勧告 が行われ、最高で 50万円の罰金 が課せられます。勧告を受けた場合は、公正取引委員会のウェブサイトで企業名が公表 されます。

おわりに

親事業者に課せられた11の禁止事項について紹介しました。上記の項目については、たとえ下請事業者の了解を得ていた場合でも下請法に違反することになるため、十分注意が必要です。

公正取引委員会のウェブサイト「親事業者の禁止事項」で、しっかり確認しておきましょう。

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