正しく理解できていますか?技能実習制度の基礎知識

外国人雇用

人手不足を補う人材として注目されている外国人労働者。中でも「技能実習生」として就労する外国人が多く、特に建設や介護の分野で目立って増えています。

技能実習生という名称は聞いたことがあっても、「どんな制度なのかよくわからない」という経営者も多いのではないでしょうか。また、失踪する実習生がいるとか、受け入れ先の事務所に立ち入り検査をしたところ、7割で労働基準法などの違反が見つかったなどというブラックな報道を見聞きして、あまり良くない印象をお持ちかもしれません。

ここでは技能実習制度について正しく理解するために、そもそも技能実習とはどのような制度なのか確認した上で、受け入れの現状と、受け入れた場合のメリットについて紹介します。

技能実習制度とは?

技能実習制度とは、開発途上地域の人材に日本の技術や知識を習得してもらい、帰国後に同地域の経済発展に貢献してもらうことを目的とした制度で、国際協力の一環として実施されています。制度の基本理念として「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と定められているとおり、「人手が足りないから、安く使える人材を雇おう」という考えとは相容れない制度だという点に留意してください。なお、母国への技能移転を目的としているため、技能実習生は最長5年しか在留資格がありません。

受け入れの現状

技能実習生の受け入れは年々増加しており、2020年末の時点で約40万人が就労しています。国籍は多い順に、ベトナム、中国、フィリピンとなっています。

技能実習生はすべての業種で受け入れられるわけではなく、働ける業種は、農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械、金属、その他 (塗装、溶接、介護、宿泊など) と大きく分けて7業種に限られています。それぞれ職種と作業が定められており、そこに含まれない作業は行わせてはいけないことになっています。例えば、建設の場合、22職種 (大工工事、配管、とび、熱絶縁、内装仕上げ施工、防水施工など) があり、それぞれに該当する作業が定められています。詳しくは、外国人技能実習機構「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧」を確認してください。

現代の奴隷制度?

以前より、低賃金や長時間労働など過酷な労働環境に置かれた実習生の惨状が盛んに報道され、「現代の奴隷制度」とまで呼ばれることのある技能実習制度ですが、実際には、数多くの成功例が存在しています。

ただし、残念ながら、制度を悪用する悪質な関連団体が存在するのは事実であり、政府による悪質業者の徹底的な排除と、制度構造の見直しが待たれるところです。

また、特定技能の資格で働ける分野は労働環境が比較的厳しい業種が多く、長時間労働など、過酷な現場になりがちなのも確かです。こうした実態に対しては、国も監視を強めています。

(参考資料:厚生労働省の「技能実習生の労働条件の確保・改善のために」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/ginoujisyu-kakuho/index.html)

このように、多くの問題点が指摘されている技能実習制度ですが、メディアにはネガティブな面ばかりが取り上げられがちです。社会的にコンプライアンスへの意識が高まっていることもあり、今後、制度趣旨を理解しない事業者による人権侵害や法令違反は、取り締まりが厳しくなると思われます。

制度活用のメリット

では、技能実習生を受け入れることにより、企業にはどのようなメリットが期待できるのでしょうか? 国際貢献ができるほか、例えば下記のようなメリットがあります。

(1) 人材確保

技能実習生は転職ができないので、3年もしくは5年間、継続的に雇用できます。

(2) 特定技能への移行が可能

2019年に導入された「特定技能」資格に移行することで、最長8年、場合によっては永続的な雇用が可能になります。

(3) 職場の活性化・生産効率の向上

若くモチベーションの高い技能実習生が多いため、効率や生産性の向上につながります。

おわりに

技能実習生は幅広い分野で受け入れが可能であり、適正に活用することで、企業には大きなメリットがもたらされる制度といえます。制度を正しく理解した上で、メリットがあると判断できれば、受け入れを検討してみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました