日本における外国人労働者数は着実に増加しています。2019年4月には改正出入国管理法が施行され、外国人雇用への門戸がさらに広がりました。以下では、日本における外国人雇用の現状と、雇用を検討する前に知っておきたいポイントについて説明します。
外国人労働者の受け入れの現状
少子高齢化による労働力人口の減少が進む日本では、外国人労働者の受け入れが右肩上がりで増加しており、2020年末時点で約172万人が就労しています。
国籍別ではベトナム人が最も多く、次いで中国人、フィリピン人、ブラジル人の順となっています。とりわけベトナム人の増加が目覚ましく、昨年初めて中国を抜いて、トップに立ちました。
産業別では、「製造業」、「サービス業」、「小売・卸売業」、「宿泊業・飲食サービス業」、「建設業」の順で多く、近年深刻な人材不足に悩む「建設業」や「医療・福祉」分野で増加が目立っています。また、現在は新型コロナの影響で足踏み状態にありますが、日本を訪れる外国人観光客のインバウンド需要の拡大により、そうした観光客に対応するための人材として外国人を採用する企業も増えています。
在留資格別には、身分に基づく在留資格 (定住者など) が約54.6万人 (約31.7%) と最も多く、技能実習が約40.2万人 (約23.3%) でそれに続きます。
事業所規模別には、事業所労働者数が30人未満の小規模事業者における雇用が61.7万人 (35.8%) と最多となっており、人手不足が常態化する中、人材の確保に苦心している中小企業の現状が伺えます。
外国人労働者増加の背景
外国人労働者増加の背景には、受け入れ拡大を狙う国の政策があります。
日本政府は、深刻な人手不足に対応するために、外国人材を積極的に受け入れ、外国人との共生社会を目指す政策に大きく舵を切りました。新たな受け入れ政策の柱の一つが、「特定技能」制度の新設です。特定技能は、2019年に改正された出入国管理法により設立された在留資格で、これにより、それまで禁止されていた単純労働分野への外国人雇用の道が拓かれました。今後、外国人労働者の活用はますます加速していくことが見込まれています。
雇用前に知っておくべき注意点
外国人労働者の雇用は人材不足の解消につながるだけでなく、外国語が必要な場面での活躍を期待できたり、外国人ならではのアイディアや発想をビジネスに活かせる機会が生まれるなど、様々なメリットがあります。ですがその一方で、注意すべき点も少なくありません。以下では、特に知っておくべき注意点について見ていきます。
(1) 文化や言葉の違い
筆頭に上がるのが、やはり文化や言葉の違いからくるコミュニケーション不全の問題です。指示がうまく伝わらなかったり、生活習慣の違いで指示に従ってもらえなかったり、様々な事態が起こり得ます。些細な誤解から思わぬトラブルに発展する可能性が多々ありますので、互いの文化や価値観を尊重する態度や教育が必要となります。
(2) 法律や制度の知識
外国人を雇用する際には、入国管理法や外国人雇用に伴う手続きなど、法律や制度に関する知識が必要となります。たとえば、雇用前の段階で、在留資格 (就労ビザ) や在留期限を確認しなければなりません。在留資格のない人を雇用してしまうと「不法就労」に該当し、たとえ知らなかったとしても、事業者は入管法違反として3年以下の懲役、または300万円以下の罰金に処せられる可能性があります (労働者側も場合によっては強制退去となり、以降5年間は日本に来ることができなくなります) 。
(3) 正しい賃金設定
日本には、未だに外国人労働者を「安価に雇用できる労働力」とみなしている会社があるようです。当然のことですが、日本人と同水準の賃金を支払う必要がありますので、「低賃金で雇える」という認識は改めるべきです。
おわりに
外国人労働者の受け入れにあたっては、文化・言語的な問題と、法律・制度的な問題という二つの側面から検討すべき注意点が多々あります。本格的に外国人の雇用を検討する際には、必要な知識をしっかり押さえた上で手続きを進めましょう。
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