その広告、行き過ぎた表現になっていませんか?「優良誤認表示」に注意しよう

会社法

消費者庁は今年(令和6年)8月9日、RIZAPに対し、同社が運営する「chocoZAP」と称する店舗において提供しているサービスに関する表示について優良誤認表示等が認められるとして、措置命令 を行いました。RIZAPは、当該命令に基づき、表示の削除、修正を行いました。

今回は、商品やサービスを宣伝する際に注意すべき「景品表示法」と、同法が規制する「優良誤認表示」について解説します。

消費者を誤解させる表示はNG

「景品表示法」は、一般の消費者の利益保護 を目的とする法律です。

消費者は、商品やサービスを購入する際、広告やパッケージの表示を参考にするため、もし実際より良いものだと見せかける表示があったり、やたら豪華な景品がついていたりすると、それにつられて、粗悪な商品やサービスを買ってしまい、不利益を被るおそれがあります。

そのため景品表示法では、①不当な表示と、②過大な景品提供 を禁止しています。そして、①不当な表示は、主に次の2種類に分けられます(その他、誤認されるおそれのある表示も禁止され、当該禁止事項は、告示によって決定されます。冒頭で紹介したRIZAPのケースでも、告示によって禁止されているステルスマーケティングが問題となり、この点でも排除命令が出されております。ステルスマーケティングとは、例えば、商品を提供している会社の役職員が第三者になりすまして、自社の商品をPRするコメントなどを投稿するものであり、令和5年10月1日より規制の対象となりました。)。

優良誤認表示 (①実際のものより著しく優良と示す表示、②事実に反してライバル会社のものより著しく優良であると示す表示)

有利誤認表示 (①実際よりも取引条件が著しく有利だと誤認させる表示、②ライバル会社よりも取引条件が著しく有利であると誤認させる表示)

今回はこのうち「優良誤認表示」を防ぐためのポイントについて説明します。

「優良誤認表示」とはどんな表示?

どこの企業も、自社の商品やサービスを売り込むため、広告やパッケージで商品を魅力的に伝える工夫を行い、消費者にアピールするのが普通でしょう。

しかし、その熱意が行き過ぎると、「優良誤認表示」として規制されるおそれがあります。

「優良誤認表示」とは、商品・サービスの内容について、

①実際のものより著しく優良であると示す

②事実に反して、ライバル会社のものより著しく優良であると示す

ことで、消費者に誤解を与え、間違った選択をさせるおそれのある表示 のことをいいます。

例えば、下記のような事例が優良誤認表示にあたるとされています。

・カシミヤ50%のセーターを、「カシミヤ100%」と表示して販売した。

・ボディクリームを「塗るだけで痩せる」と表示して販売したが、痩身効果を実証するデータはなかった。

冒頭ご紹介したRIZAPの件でも、追加料金なしで全サービス24時間使い放題と表示をしていたにもかかわらず、実際は、1日24時間のうち、いつでも又は好きな時に利用できるものではなかった点が、優良誤認とされております。

なお、消費者庁が期間を定めて表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたにもかかわらず、事業者が当該期間内に何ら資料を提出しない場合や、何らかの資料が提出されても、それが表示の裏づけとなる合理的な根拠を示すものとは認められない場合には、当該表示は優良誤認表示とみなされることに留意する必要がございます。

違反した場合のペナルティ

次に、もし景品表示法に違反してしまったら、どのような処分等がなされるのかについて見ていきます

(1) 措置命令

消費者庁による調査の結果、景品表示法違反が認められた場合、事業者に対して弁明の機会を与えたうえ、違反行為の差止めや、再発防止策の実施などを命ずる「措置命令」が行われます。措置命令の具体的な内容には、「違反とされた表示を排除すること」、「違反した表示をしていたことを消費者に知らせること」、「今後同様の表示が行われないよう、再発防止策を実施すること」などが含まれています。

なお、違反事実が認められない場合でも、違反のおそれがある行為が見られた場合、「指導の措置」がとられることがあります。

(2) 罰金 (施行日令和6年10月1日)

優良誤認表示及び有利誤認表示には、新たに100万円以下の罰金の規定が設けられました。法人に関しても、両罰規定に基づき100万円以下の罰金が科されます。

(3)課徴金納付命令

優良誤認や有利誤認が認められた場合、違法な手段で利益を得たとみなされ、課徴金の納付が命じられることがあります。基本的には、「不当表示をしていた期間に販売された商品やサービスの売上高の3%」が課徴金対象金額になります。

なお、令和6年10月1日からは、課徴金の計算の基礎となる売上高を推計することができる規定、及び度重なる違反者には課徴金の額が加算される規定が適用されます。

(4)適格消費者団体による差止請求

適格消費者団体により差止請求を受けることもあります。例えば、医薬品としての承認がされていない商品について、医薬品的な効能効果が表示されている場合、当該表示は、一般消費者に対し、当該商品があたかも国により厳格に審査され承認を受けて製造販売されている医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるから、優良誤認表示にあたるとされた事例がございます。

なお、令和6年10月1日からは、一定の場合に、事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるものとされました。事業者はこの適格消費者団体からの要請に応じる努力義務を負います。

(5)確約手続(施行日令和6年10月1日)

景表法に違反した事業者は、確約計画を作成及び申請することで、消費者庁が当該計画を認定した場合には、措置命令及び課徴金命令を避けられます。

確約手続は、消費者庁からの事業者に対する通知によって開始し、事業者による確約計画の申請、消費者庁による審査という形で進められます。

確約計画が認定されるかは、措置内容の十分性及び措置実施の確実性によって判断がなされることになります。

おわりに

消費者庁から措置命令等を出された場合、企業のレピュテーションに悪影響が生じるところであり、不当表示等を起こさない体制整備を行うことが必要です。

当該体制の整備は法律上も義務付けられているところであり、当該体制整備の参考として指針も定められているところでございます。

当該体制整備の状況が悪い場合には、確約手続を利用できない場合があるとされております。

今年(令和6年)10月からは優良誤認や有利誤認が認められた場合には刑事罰の対象になる等、一般消費者の利益を保護する取り組みが進んでいるところでございますので、自社の不当表示等を起こさない体制整備の状況について再度確認する必要がございます。

監修 : 石田 哲也 (牛島総合法律事務所 パートナー弁護士)

慶應義塾大学法学部・慶應義塾大学法科大学院卒業。
米国コロンビア大学ロースクール修了 (LL.M., Harlan Fiske Stone Scholar)。
ニューヨーク州弁護士、CIA(公認内部監査人)の資格も有している。
金融、不動産、スポーツ、エンタメ業界を中心に、訴訟案件や企業不祥事案件、M&A、コーポレートガバナンスコード対応など多岐にわたる案件を取り扱う。
書籍、裁判例、データベース、外国の実務等あらゆるツールを駆使して、法的観点から依頼者のサポートを行う。

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