就業規則は法改正や会社の状況に合わせて変更の必要が生じることがあります。
その場合、会社が勝手に変更することはできず、正しい手順に従わなくてはなりません。
なお、変更内容が労働者にとって不利益になる場合は、労働契約法により、合理的な理由がある場合をのぞいて、労働者の合意が必要となるため注意が必要です (詳細は別コラムにて解説します)。
変更の手順
具体的には次のような手順を踏んで変更することになります。
(1) 変更する条文案を作成
(2) 就業規則変更届の作成
(3) 労働者 (従業員) の過半数を代表する者の意見書の添付
(4) 労働基準監督署へ届出
(5) 社内へ周知
以下、詳しく見ていきましょう。
(1) 変更する条文案を作成
まずは変更案を作成します。その際、パートやアルバイトなど非正規雇用労働者がいる場合は、適用される従業員の範囲を決める必要があります。加えて、
- 法令に違反する部分がないか
- 最新の判例動向に則しているか
- 従業員に不利な内容になっていないか
- 会社の実情に則した内容になっているか
などの点をチェックします。
(2) 就業規則変更届の作成
変更前と変更後の違いを記載して提出する必要があります。
変更届の様式に定まったものはありませんが、都道府県の労働局のHPからテンプレートをダウンロードして利用することができます。
(3) 労働者の過半数を代表する者の意見書の添付
変更に際しては、労働者代表等 (過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者) から意見聴取を行う必要があります (労働基準法90条) 。なお、管理者や監督者が労働者代表になることはできません。
意見書は「意見を聴く」ことが求められるだけで、「同意を得ること」までは要求されていません。したがって、反対意見であっても会社はそれに従う必要はなく、そのまま届け出を行えば、就業規則の効力は発生します。
とはいえ、反対意見が出た場合はそのまま無視するのではなく、できる限り従業員の意見に耳を傾け、変更の必要性を丁寧に説明するなど、理解を求めることが望ましいでしょう。
(4) 労働基準監督署へ届け出る
就業規則変更届、労働者代表の意見書、変更後の就業規則を、各事業所を管轄する労働基準監督署へ届け出ます。本社も各事業所も変更前と変更後の内容が全く同じ場合には「本社一括届出制度」を利用するとよいでしょう。
届出方法は、①持参、②郵送、③e-Gavの電子申請から選択できます。
(5) 社内へ周知
就業規則の変更は、従業員への周知をもって効力を発生しますので、非常に重要な手続きです。下記のような方法で周知するとよいでしょう。また、どこがどのように変わったのか分かるように、新旧対照表を付けることもおすすめです。
- 社内の見やすい場所に掲示する
- 従業員全員に書面を交付する
- データを社内ネットワーク上に保管して、その旨を従業員に通知する
おわりに
就業規則の変更手続きには労力と時間を要しますが、会社の運営にとって非常に大事な役割を果たすものです。後々トラブルとならないよう、必要な手順と注意点を十分に把握した上で進めるようにしましょう。
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