就業規則はいつ作るのがベスト?
「就業規則は、従業員が10人以下なら作らなくていいんですよね」
「うちはまだ社員が一人しかいないから、特にルールを決めなくても大丈夫」
「何となく面倒だし、コストもかかりそうなので、後回しにしている」
そういった声をよく耳にしますが、実際のところ、就業規則はいつが「作りどき」なのでしょう?
法律的には、常時10人以上の従業員を使用する会社は、就業規則の作成と労働基準監督署への届出義務があります。つまり、それ以下の従業員しか雇っていなければ、就業規則を作成しなくても大丈夫ということになります。
ただし、それはあくまで「法律上の義務はない」ということで、作らない方が得かと言えば、まったくその逆です。
例えば、トラブルを起こしてばかりいる社員がいても、就業規則で定めておかないと、懲戒解雇や配置転換が難しく、その社員のせいで他の優秀な社員が辞めてしまう恐れもあります。
また、就業規則があれば、従業員を雇う際に細かな労働条件を契約で定めておかなくても、一律に規則が適用されるなど、さまざまなメリットがあります。
「就業規則なんて作ったら、従業員が権利を振りかざして何かと要求してくるのではないか?」、「規則に縛られて、柔軟な会社運営が阻害されるのではないか」、と心配する経営者もいるかもしれませんが、リスクマネジメントの観点で見ると、実は作成するメリットの方が大きいのです。
結論として、たとえ従業員が10人以下であっても、今後、会社の規模を大きくしていこうと思ったら、就業規則の作成を検討することをおすすめします。思い立った時が、「作りどき」です。
どのように作成すればよい?
さて、就業規則の重要性を認識したところで、実際の作成方法について確認しておきましょう。
(1) 自分で作成する
就業規則は、専門家に頼まなくても、自分で作成できます。
もちろん、ある程度の法律の知識は必要になりますが、インターネットを検索すればひな形・テンプレートや作成のヒントがたくさん見つかりますし、関連書籍も数多く出版されています。
手間と時間はかかりますが、なるべくコストを抑えたい方は、それらを参照して作成しましょう。
オススメは、やはり、厚生労働省が提供している「モデル就業規則」です。こちらは外国語版 (英語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語) も用意されています。なお、法令の改正に対応すべく、適時更新されているので、最新版かどうかを確認した上で使用するようにしてください。
(モデル就業規則 (令和3年4月) )
同省では「就業規則作成支援ツール」も提供しており、入力フォームから必要項目を入力・印刷することで、労働基準監督署に届出が可能な「就業規則」を作成することができます。
(https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/support_regulation.html)
ただし、ひな形には当然、自社の規模や事業内容とは合わない条項も含まれています。また、従業員側に有利な条項、つまりは会社が不利となる条項が含まれている場合もあるため (特に労働基準監督署が作成したひな形はその傾向が強いようです) 、注意が必要です。
一度作成した就業規則は、容易には変更できません。そのため、細部まで気を配って作成しなくてはならず、「見えないコスト」がかかってしまう恐れがあります。
(2)専門家に依頼する
忙しくて自分で作成する時間がない場合や、自分で作れる自信がない場合は、専門家に任せるのが安心です。
その場合は、社会保険労務士か弁護士に依頼するのが一般的でしょう。
社会保険労務士は会社の労働・社会保険に関する問題に強く、労務管理に精通しているため、就業規則の作成も安心して任せることができます。
一方、弁護士に依頼する場合は、特に労働問題に力を入れている事務所を選択するとよいでしょう。労使トラブルから発生した訴訟を多く手がけたことがある弁護士であれば、トラブルの解決策も熟知している場合が多く、リスク・マネジメントの点で強力なアドバイザーになってくれると期待できます。
それでもやはりコストが心配…という方は、まずは自分で作成してみて、最終チェックを専門家に依頼するという方法もあります。法的な不備や過不足を指摘してもらうだけになりますが、作成からすべて依頼するよりコストがかかりません。
おわりに
就業規則は従業員に安心して働ける環境を提供するものでもあり、経営者と社員との信頼関係の構築に寄与するものです。小さな会社ほど、経営者の行動ひとつで、従業員の士気や社内の雰囲気は大きく変わります。就業規則の整備は、会社として成長を遂げるための大事な一歩なのです。
コメント