初めての外国人雇用:採用までの5ステップ〜②書類選考から面接までの重要ポイント

外国人雇用

求人の募集をかけて応募者が集まったら、提出された履歴書や職務経歴書による選考を行い、面接に進む人材を選ぶことになりますが、その際に必ず確認すべき点や、注意が必要な事柄があります。

ここでは、前回の「ステップ1:募集」に続き、「ステップ2:書類選考」と「ステップ3:面接」における重要ポイントについて説明します。

選考段階で確認すべきこと

外国人を採用する場合、面接に進む前の選考段階で、次の2点を必ず確認しなくてはなりません。

(1) 日本で働ける在留資格を持っているか (入社時までに必要)
(2) 入社後に従事してもらう業務が、在留資格の対象になっているか

この2点は「在留カード」で確認することができます。在留カードには、在留期間、在留資格、資格外活動許可の有無などが記載されています (ただし、滞在期間が3ヶ月以下なら、在留カードではなくパスポートで確認します) 。

(1) 在留資格

①在留資格の中には、「日本で就労できない資格」もあるため、必ず「就労可能な在留資格(就労ビザ)」を持っているかどうか、期限が切れていないかを確認してください。なお、「永住者・定住者」や「日本人の配偶者」の在留資格を保有している場合は、日本人と同じ条件で働けるため、就労ビザは必要ありません。ただし、期限が切れていないかの確認は必要でしょう。

②「就労可能な在留資格」は現在19種類あり、資格ごとに「活動の範囲」が定められています。そのため、入社後に任せたい仕事がその活動の対象になっているかを確認する必要があります (例えば、事務職として採用するのであれば「技術・人文知識・国際業務」、介護職なら「介護」という資格が必要です) 。

(2) 採用したい人が就労ビザを持っていない場合の対応

新卒の留学生など、就労ビザを持っていない人を採用する場合は、入社時までに「在留資格の変更手続き (在留資格変更許可申請) 」が必要となります。手続きは、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署か外国人総合インフォメーションセンターで行い、原則、本人が行いますが、会社側で用意すべき書類もあります。

ただし、必ず変更が認められるわけではなく、学歴・職歴・実務経験などの本人の要件、仕事内容、安定性、過去の違反などの企業側の要件を満たす場合のみ認められます。せっかく採用したのに、変更が認められなければ、その人に働いてもらうことはできませんので、選考段階で変更可能性をしっかりと見極める必要があります。

その際の判断材料となるのが、履歴書や職務経歴書に記載された、学歴や職歴、日本語能力試験の結果などです。専攻内容と任せたい仕事内容に高い関連性があったり、出身国で数年以上の実務経験等があったりする場合、変更が認められる見込みが高くなります。

(3) 転職者を受け入れる場合

外国人の転職者が、前職と異なる業務に就く場合にも、在留資格の変更手続きが必要となります。例えば、語学教師として働いていた人を、社内通訳者として雇い入れる場合です。なお、前職と同じ業種へ転職する場合は変更手続きの必要はありませんが、「就労資格証明書」の交付申請を行なっておくと安心です (義務ではありません) 。

(4) 在留資格変更に要する期間

在留資格変更手続きには、1〜3ヶ月ほどかかります。なお、変更が認められなかった場合に備えて、念のため「入社前に許可されない場合は内定は無効」となることを、内定通知書に記載しておくとよいでしょう (雇用契約書にもそうした条件の記載は必要となります。詳細は別記事にて説明します) 。

(5) 罰則

もし、就労可能な在留資格のない人を雇ったり、在留資格外の仕事をさせてしまった場合、事業主も不法就労助長罪が適用され、処罰の対象(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)となりますので、注意しましょう。

(6) そのほか、確認しておくべき書類

パスポートや在留カード以外にも、下記の書類を提出してもらいましょう。

・日本語能力試験の結果

日本語による会話力は面接である程度判断できますが、読み書きの能力の判断には「日本語能力試験の結果」が役立ちます。日本語の会話は流暢にできても、読み書きが苦手な外国人は少なくありませんので、こうした試験結果のほか、履歴書や職務経歴書の書き方なども判断の材料にしてください。

卒業見込みまたは卒業証明書

留学生を採用する場合に提出してもらいます。

採用面接で注意したいポイント

書類選考が終わったら、いよいよ面接に進みます。以下では、法的観点から、外国人の採用面接で注意すべきポイントについて説明します。

(1) 差別的な発言や質問をしない

言うまでもなく、国籍によって採用・不採用を判断するのは法律違反となります (憲法第14条、労働基準法第3条、職業安定法第3条など) 。また、日本人と同様、採用面接は本人の「適正・能力」のみを基準に選考しなくてはいけません。家族、出生地、国籍など「本人に責任のない事項」、思想、信条など「本来自由であるべき事項」について尋ねることは人権侵害となるおそれがあります。外国人は人権意識が高く、差別的な発言に敏感な人が多いため、誤解されるような発言は慎むようにしてください。

(2) 採用後の条件を明確に伝える

給与など待遇面をはじめ、業務範囲や内容について、誤解が生じないよう明確に事細かく伝えるようにしましょう。例えば、メインの業務に付随する事務作業にも従事してもらう予定があれば、はっきり伝えておきます。それを曖昧にしておくと、採用後に「提示された範囲外の仕事を命じられた」と、トラブルに発展する可能性があります。

(3) 留学生の場合はアルバイト経験について確認する

「留学」の在留資格では、学期中のアルバイトは週28時間までと法律で定められています。この制限を超えて働いていた場合は、就労可能な在留資格を取得できない可能性があります。

おわりに

外国人の採用にあたっては、日本人とは異なる確認事項や手続きが多くあります。確認の不備で採用活動が無駄にならないよう、確実に手続きを進めることが肝要です。

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