会社と従業員のあいだには「雇用契約」や「就業規則」など、さまざまな取り決めやルールが存在しており、両者ともそれに従う義務があります。その中のひとつが、会社と労働組合が取り決める「労働協約」です。今回は、この「労働協約」について取り上げます。
「労働協約」とは?
「労働協約」とは、賃金、休日、労働時間などの労働条件などについて、労働組合と使用者 (会社) が書面で取り交わした約束事です。労働組合と会社のあいだで交渉を行い、合意に至った結果として締結されるもので、書面に記載し、両当事者が署名または記名捺印することで効力を持ちます。最長3年の有効期間があります。
労働協約を結ぶ目的は、労働者側の「よりよい労働条件の獲得」ですが、労使関係の安定や、健全化が実現することで、使用者側にとっても利益がもたらされると考えられます。
「労使協定」との違いは?
似たような名前のものに「労使協定」があります。
労使協定とは、使用者と過半数の労働者からなる労働組合 (もしくは使用者と過半数の労働者代表) が書面で取り交わした約束事です。
労使協定の目的は、「法律で決められた労働条件の例外を認める」ことです。労働協約や就業規則では法律の規定を逸脱することは許されませんが、労使協定では認められています。最も一般的な労使協定に、法定労働時間を超えた残業を認める「36協定」があります。
他のルールとの関係は?
次に、他のルール (就業規則、雇用契約) との関係について見ていきましょう。もしこれらのルールに重複した規定がある場合、優先順位は以下のようになります。
労働基準法>労働協約>就業規則>雇用契約
当たり前ですが、法律 (労働基準法) がすべてに優先します。「就業時間」を例を挙げて説明しましょう。
「労働基準法」では、1日の就業時間は8時間と決まっていますが、「就業規則」では7時間45分と定めていたとします。これに対し、「労働協約」で7時間30分と決めれば、就業規則の規定よりこちらが優先され、就業時間は「7時間30分」となります。
おわりに
労働協約は、労働契約や就業規則よりも優先されるため、非常に強力な取り決めといえます。締結する際は、専門家に相談するなどして慎重に行いましょう。
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