前回の記事で、景品表示法(景表法)に違反すると「措置命令」が行われることについて取り上げました。今回は、2016年4月に導入された「課徴金制度」について説明します。
2016年4月以前も、措置命令に従わなかった場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられました。しかし、命令に従わない企業はほとんどないため、「ばれたら正せばいいや」という考えで、故意に不当表示を行う企業があるのでは、との懸念がありました。また、企業によっては、不当表示を行うことで莫大な利益を上げる場合があり、そうした「不当な儲け」を許しておいていいのかという指摘もありました。
「課徴金制度」は、このような不当な利益を没収する目的で作られた制度です。
課徴金はいくら支払うことになる?
課徴金納付命令によって命じられる課徴金の額は、
「課徴金対象期間」に行った取引によって得られた売上高の3%に相当する額となります(課徴金額が150万円を下回る場合には課されません)。
この「課徴金対象期間」は、
① 課徴金対象となる不当表示を始めた日から止めた日までの間
+
② 不当表示をやめてから最後に商品やサービスを販売した日までの期間
になります。
上記の①と②を合計した期間の上限は3年間です。これを超えて納付を命じられることはありません。仮に、3年を超える場合、課徴金対象期間は最後の取引から遡って3年間となります。
支払い期限
課徴金の納付期限は、事業者に対し「課徴金納付命令書」が発送された日から7ヶ月を経過した日とされています。
納付期限までに課徴金を納付しないと、内閣総理大臣により督促を受け、その督促で新たな納付期限を指定されます。その場合、課徴金の額に加え、年率14.5%の割合で算出された延滞金の納付を命じられる可能性があるため、注意が必要です。
さらに、督促を受けてから新たに指定された期限までに納付しなかったときは、内閣総理大臣の命令で、課徴金納付命令が執行されます。この場合、財産を差し押さえられる可能性があります。
課徴金の減額
調査開始前に、違反行為を自主申告した事業者に対しては、課徴金額の2分の1が減額されます。さらに、課徴金納付命令を受けるまでの期間内に、被害を受けた消費者に課徴金相当額以上の自主返金を行った場合は、課徴金が免除されます(課徴金額に満たない場合は減額)。
課徴金を支払わなくてもよい場合
課徴金対象行為にあたる表示をしたとしても、下記のいずれかに当てはまる場合は、課徴金納付命令を受けることはありません。
① 算出された課徴金の額が150万円未満(商品やサービスの売上額が5000万円未満)
② 不当表示をしたことに、故意・重過失がない場合
③ 不当表示をやめてから5年が経過している場合
もっとも、課徴金納付命令を受けない場合であっても、「措置命令」がなくなるわけではありません。そのため、不当表示を是正するなどの対応をする必要があることは、言うまでもありません。
おわりに
課徴金納付命令を受けると、多額の納付金を支払うだけでなく、商品やブランド・イメージを大きく毀損することになります。適切な広告表示を心がけるためにも、課徴金制度の内容をしっかり押さえておきましょう。
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