セクハラ、ふたつのタイプ
男女雇用均等法は、職場におけるセクハラを以下のように定義しています。
職場において労働者の意に反する性的な言動が行われ、①その性的な言動を拒否したり抵抗したことによって不利益を受けること、または、②その性的な言動によって当該労働者の就業環境が害されること
このうち、①は対価型セクハラ、②は環境型セクハラと呼ばれています。
対価型セクハラは、セクハラ行為を拒否したことで、解雇、減給、降格、望まない部署異動などの「不利益を受ける」ことで、例えば、飲み会で上司に身体を触られたことに抵抗したら、プロジェクト・リーダーから外された、ような場合が該当します。
一方の環境型セクハラは、性的な言動により労働者の就業環境が悪化することで、例えば、社長が何かと肩や頭に触れてくるので会社に行くと気分が悪くなる、同僚がしつこく「飲みに行こう」と誘うので仕事に集中できなくなった、社内の壁に水着女性のポスターが貼ってあるので不快な気持ちになる、などの例が挙げられます。
環境型セクハラの悩ましい点
「対価型」は誰がどう見てもセクハラだとわかる悪質なものが多いのに比べて、「環境型」は直接的な被害が出ていないため、一見、セクハラとは判断しにくいものもあります。そのため、被害者が「この程度は我慢しよう」と思っているうちに、加害者の言動がエスカレートして、被害が持続・拡大してしまうおそれもあります。逆にいうと、加害者側も、最初のうちは自分の言動がセクハラだと気づいていない場合があるということです。また、「コミュニケーションの一環」、「悪気はない」、「そういう性格だから」と、周囲がセクハラ言動を許してしまっている例も見受けられます。
これも環境型セクハラ?
では、「環境型セクハラ」を防ぐにはどうすればよいのでしょうか?
まずは、どのような言動が環境型に該当するか確認し、自分がそのような言動をしていないか、我が身を振り返ってみる必要があります。
例えば、次のような言動について、身に覚えはないでしょうか?
・女性従業員のファーストネームを「ちゃん」付けで呼ぶ
・性的なうわさを流す(例:「昔、キャバクラでバイトしていたらしい」「浮気しているんだって」)
・性的な冗談を言う(例:「仕草がゲイっぽいよ」)
・身体的特徴を話題にする(例:「いつ見てもスタイルがいいね」)
・食事やデートへの執拗な誘い(例:断られても何度も誘う場合で「一緒に飲みに行こう」「温泉に行かない?」)
・容姿や服装についての感想(例:「安産型だね」「スカートの方が似合うよ」)
・性別を理由にした発言(「女はすぐ感情的になる」「男のくせに力がない」)
・プライベートなことを話題にする(例:「休日はデートとかするの?」「まだ結婚しないの?」)
上記は、必ずしもセクハラに該当しないかもしれませんが、相手との関係性や頻度によっては、セクハラとみなされる可能性があるため、注意が必要です。以下のような話題は、職場ではなるべく控えた方がよいかもしれません。
・相手の恋人や配偶者
・容姿や服装
・性別を理由とした発言
・ブライベートに踏み込んだ話題
判断基準
相手が不快に感じれば、すべてセクハラに該当するわけではありません。
被害者の心情を重視しつつも、一定の客観性が必要とされています。つまり、被害者が女性なら「一般的な女性の感じ方」、被害者が男性なら「一般的な男性の感じ方」が判断基準となります。
また、1回限りの言動で「就業環境が害される」ことは少なく、直ちにセクハラとはならない場合も多いと考えられます。相手が不快感を示しているにもかかわらず、繰り返し継続的に行われた言動は、セクハラとみなされる可能性が高くなるでしょう。なお、たとえ1回限りの軽いものであっても、ボディタッチは相手に精神的苦痛を与え、セクハラとなる可能性が高いため、厳に慎むべきです。
おわりに
すべてのハラスメントの底にあるのは、相手への思いやりの欠如です。
環境型セクハラの判断は「被害者がどう受け取るか」も関係してくるので、「このような言動をしたら、相手がどう感じるか」を念頭に置きながら接するように心がけましょう。
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