働き方の多様化が進み、柔軟な勤務体制を採用する企業が増えてきました。少子高齢化により労働人口が減少している今、「生産性の向上」がますます重要になってきています。
そんな中、「裁量労働制」にも注目が集まっています。
今回は「自社でも裁量労働制を導入したいが、どうすればよいのだろう」とお悩みの方に向けて、裁量労働制とはそもそもどんな制度なのか、どんな業務に適用できるのかといった基礎知識を説明します。
裁量労働制とは
裁量労働制とは、労働者本人が働く時間や配分を決めることができる制度 です。
専門性の高い仕事の場合、「定時に出社して定時に仕事を終える」、というルールの中では効率よく働けない場合があります。そこで、労働時間を束縛せず、本人が成果を出しやすいように、比較的自由な働き方を認めようというのが、裁量労働制の目的です。
裁量労働制で働く従業員は、何時に出勤してもよいし、好きな時間に勤務を終えることが許されます。そのため「遅刻」や「残業」という概念がありません (ただし、深夜労働や休日に労働した場合は、割増賃金が発生します) 。短時間で仕事を終えることも、逆に、長時間働くことも可能なので、時間に縛られずに働くことができます。
裁量労働制の種類
どんな業務でも「裁量労働制」を適用できるわけではなく、厚生労働省が定めた業務に限定されており、現状、以下の2種類に分かれています。
① 専門業務型
② 企画業務型
以下でそれぞれの業務の内容と適用条件を説明します。
(1) 専門業務型
業務の性質上、仕事の手段・方法や時間配分などを、労働者の裁量に大幅に委ねる必要がある業務に適用されます。
例えば、研究業務、新聞記者、編集者、デザイナー、建築士などの仕事が当てはまります。
(参考資料:厚生労働省「専門業務型裁量労働制」)
なお、導入には 労使協定の締結と、労働基準監督署への届出 が必要となります。
(2) 企画業務型
企業運営の根幹にかかわるような重要事項について、立案、企画、調査分析などを行う職種が適用対象となります。
本社・本店のような事業運営に関する決定権を持っている職場で、上司からの指示を待たず、主体的に業務運営に関する業務を行う場合に適用され、例えば、企画経営や営業企画などの業務が当てはまります。
企画業務型を導入する場合には、専門業務型よりもさらに厳しい要件があります。
具体的には、複数の事項について「労使委員会」において5分の4以上の多数決を得て、労働基準監督署へ届け出る必要があります。さらに、労働者の個別的な同意も必要です。
(参考:厚生労働省「企画業務型裁量労働制」)
おわりに
裁量労働制は、柔軟な働き方と生産性向上に資するなど、企業にも労働者にもメリットのある制度ですが、どんな仕事にも適用可能なわけではありません。導入を検討する場合は、本文中で紹介した資料などを参考に、まずは適用可能な業務かどうかきちんと確認しておきましょう。
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