新商品の発売などに合わせて、「期間限定の割引キャンペーン」を行うことはよくあるでしょう。
例えば 通常価格5,000円の商品を、「1ヶ月限定価格3,980円」で販売したとします。そのキャンペーンが好評なので、もう少し続けたいな…と思った場合、何も考えずに延長していませんか?
実は、そのような「キャンペーンの延長」は法律で禁じられる場合があるので、注意が必要です。以下、詳しく見ていきましょう。
どうしてキャンペーンを延長できないの?
冒頭述べたように、「期間限定」や「今だけ」のように、あたかも「限られた期間」のみキャンペーンを実施していると見せかけて、実は期間終了後も同じキャンペーンを続けてしまうと、景品表示法の有利誤認表示 に該当することになります。
有利誤認表示 とは、賞品やサービスの価格や取引条件について著しく有利だと誤認される可能性のある不当表示のことです。
「安く買えれば消費者にとっても得なのだから、延長しても問題ないのでは?」と思われるかもしれませんが、キャンペーンにつられて、「今だけ安いなら、無理してでも買っておこう」と購入した消費者にしてみれば、騙されたような気持ちになり、会社に不信感を感じてしまうでしょう。
そもそもキャンペーンは、「消費者が本来であれば必要でないタイミングで商品やサービスを購入してしまうように仕向けてしまう」可能性を持っているため、実施には慎重さが求められるのです。
いったん終了してから再開すればOK?
キャンペーンの延長がダメなら、いったん終了し、期間を空けて再開すればよいのではないか、と思われる方もいらっしゃると思います。
結論からいうと、割引キャンペーン期間が終わった後、いったん通常価格で販売してから、再度キャンペーンを行うことは可能です。
ただし、「今月のみ」「今だけ」のように、時期を特定してキャンペーンを行っていた場合は、法律違反の可能性が高くなります。
また、数日のような 短い間隔しか空けずに同じキャンペーンを実施する場合、キャンペーンの連続性が否定されないおそれがあります。この場合、過去の販売価格を比較対象価格とする二重価格表示における「8週間ルール」(こちらの記事を参考にしてください。)に留意しつつ、キャンペーンの再開時期を慎重に検討する必要があります。
キャンペーンの内容を変えれば、延長してもOK?
キャンペーン内容を変更すれば、延長しても大丈夫なのではないか?、と考える方もいらっしゃるでしょう。
こちらも結論からいえば、内容を変更すれば、当然別のキャンペーンになりますので、可能ということになります。
ただし、「限定価格3,980円」を「限定価格3,780円」に変更するなど、変更内容がごく僅かだった場合、キャンペーンの同一性が否定されない可能性がありますので、注意してください。
おわりに
キャンペーンの実施は、売上増が見込めるため、つい延長や繰り返しをしてしまいがちなので、注意が必要です。あらかじめ同じキャンペーンを何度も繰り返したいと思っているなら、事前に「今年は○月と○月に同様のキャンペーンを行います」のように告知しておくことをおすすめします。
監修 : 板井 貴志 (フォーサイト総合法律事務所 パートナー弁護士)
スタートアップ企業や上場企業を中心に、AI、Fintech、SaaS、WEB3.0、ロボティクス、EC、システム/アプリ/ソフトウェア取引、個人情報・ビッグデータ、通信・セキュリティなどのテック分野での助言を行う。
特に、スタートアップ企業やIPO準備企業に対する資金調達支援、ビジネスモデル適法性審査、知財活用などの助言実績多数。
外部役職として、社外監査役や各種アクセラレーションプログラムのメンター等。
コメント