押さえておくべき「二重価格表示」の表記ルール

会社法

価格表示は、消費者が商品やサービスを購入する際に参考にする、最も重要な情報の一つです。そのため、「適正ではない価格表示」は、景品表示法という法律で禁じられています

では、どのような価格表示が不適当として違法になるのでしょうか?

消費者庁は「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」 (以下「ガイドライン」といいます) を公表し、違法のおそれがある表示について、考え方を示しています。

今回は、ガイドラインで解説されている「二重価格表示」について取り上げ、どのような場合に違法になってしまうのか、注意点とともに説明します。

「二重価格表示」とは?

商品の販売価格とは別に、それより高額な別の価格 (比較対象価格) を同時に表示することを「二重価格表示」といいます。例えば、「通常価格3,000円のところ、50%オフで1,500円」みたいな表示です。

この比較対象価格 (上記の例でいうと「通常価格3,000円」) については表示ルールが定まっており、それに従わないと不当な表示 (有利誤認表示) とみなされ、景表法違反となるおそれがあります。以下、具体的に説明します。

二重価格表示のルール

どのような「二重価格表示」を行うと景表法違反になるのか、注意点とともに見ていきましょう。

(1) 過去の販売価格を併記する場合の注意点

上で例に挙げた「通常価格3,000円のところ、50%オフで1,500円」のように、自らの過去の販売価格を比較対象にするには、実際に販売を行った実績が必要です。

その点、ガイドラインでは、通常価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であれば不当な表示ではないとしています。

この「最近相当期間」とは、「セール開始時点からさかのぼる8週間のうち4週間以上」とされており、これは「8週間ルール」と呼ばれています。

例に当てはめると、3,000円で販売していたのがセール開始時期からさかのぼる8週間のうち3週間だけで、その後はセール価格の1,500円で販売していた場合、違法となるおそれが高くなります。なお、8週間ルールには違反していなくても、①3,000円で販売されていた期間が通算で2週間未満の場合や、②3,000円で販売された最後の日から2週間以上経っている場合も、「最近相当期間にわたり販売された価格」とはみなされません。

(2) 将来の販売価格を併記する場合の注意点

「今だけお試し価格500円 (来月から700円で販売します)」のように、自らの将来の販売価格を併記するケースでは、次の2つの場合に違法になるおそれが高くなります。

①セール期間後、将来の価格として表示した価格で販売する予定がない場合

②ごく短期間しか将来の価格として表示した価格で販売する予定がない場合

(3) 希望小売価格を併記する場合の注意点

「メーカー希望小売価格」を併記する場合、あらかじめウェブサイトやカタログなどで公表された価格である必要があります。

(4) 競争事業者の販売価格を併記する場合の注意点

競合他社の販売価格を併記するケースでは、例えば以下の場合に、違法となるおそれがあります。

①消費者が購入する機会のない商圏の異なる店舗の販売価格を用いる場合

②最近の販売価格とはいえない価格を表示する場合

③販売する商品と同一ではない商品の価格を表示する場合

違法な二重価格表示をした場合の罰則

二重価格表示が違法とみなされると、消費者庁の措置命令課徴金納付命令の対象になります。

おわりに

「二重価格表示」は非常によく使われる表示方法なので、うっかり違反してしまわないよう、上記の表記ルールをしっかり把握しておく必要があります。可能であれば、社内にリーガル・チェックを行う体制を構築するなど、「不当な価格表示」を予防する仕組みを作っておくと安心です。

監修 : 板井 貴志 (フォーサイト総合法律事務所 パートナー弁護士)

金沢大学法学部・東北大学法科大学院卒業。
スタートアップ企業や上場企業を中心に、AI、Fintech、SaaS、WEB3.0、ロボティクス、EC、システム/アプリ/ソフトウェア取引、個人情報・ビッグデータ、通信・セキュリティなどのテック分野での助言を行う。
特に、スタートアップ企業やIPO準備企業に対する資金調達支援、ビジネスモデル適法性審査、知財活用などの助言実績多数。
外部役職として、社外監査役や各種アクセラレーションプログラムのメンター等。

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