試用期間はまだ本採用したわけではないので、簡単に解雇できると思っていませんか?
結論からいうと、試用期間中の解雇は通常の解雇よりはハードルが低いのですが、かといって、安易に解雇してしまうと、不当解雇で訴えられるおそれがあります。
今回は、まず試用期間の法的意味合いを確認した上で、どのような場合に試用期間中の解雇が認められるのか、どのような点に気を付けるべきなのかについて解説します。
「試用期間」とは?
「試用期間」とは、法的には「解約権留保付労働契約」といわれています。
簡単にいうと、試用期間中の従業員が本採用に適さない場合、企業が解約権を行使して本採用を拒否できる契約です。
契約が成立している以上、何の理由もなく解雇はできません。「解雇しても仕方ない」といえるだけの合理的な理由と相当性が必要となります。
もっとも、「試用期間」はそもそも本採用に適した人材か見定めるための仕組みですので、通常の解雇よりは、ゆるやかに認められるとされています。
どんな場合に「試用期間中の解雇」が認められる?
では、具体的にはどのような場合に「試用期間中の解雇」が認められるのでしょうか?
個々のケースによって判断が必要となるため、一概に「この場合は認められる」とは言えないのですが、以下ではよくある解雇理由を挙げたうえで、解雇が有効か無効かの判断のポイントについて確認していきます。
(1) 能力不足
能力不足は、試用期間中の解雇理由として、最も多い理由かもしれません。
ただし、能力不足を理由とした解雇は容易ではありません。働き始めたばかりの人に能力が足りないのは、ある程度仕方ないことだからです。判断のポイントは次の2点です。
① 新卒や未経験者かどうか
② 適切な指導や教育を行ったか
まず①ですが、新卒や未経験者であれば能力不足は当然なので、より十分な期間を与えて適正を判断すべきだと考えられます。そのため、試用期間満了を待たずして行った解雇は、不当解雇と判断される可能性が高くなります。その点、即戦力を期待されて採用された人材に関しては、比較的、解雇が認められやすいでしょう。
次に②ですが、未経験者、経験者を問わず、入社した人にとっては新たな業務内容や仕事環境に慣れるまで、周囲のサポートが必要となります。そのため、十分な指導や教育を提供していない場合は、解雇の有効性が低くなると考えられます。
(2) 勤務態度
遅刻や欠勤が多い、協調性がなく反抗的態度を見せる、といった従業員の場合はどうでしょうか? 判断のポイントは下記2点です。
① 遅刻や欠勤の場合、何回くらいあったか
② 適切な注意や指導を行ったか
①については、1回2回の遅刻や欠勤で解雇すれば無効と判断されやすいことは想像がつくでしょう。②もからんできますが、何度も遅刻・欠勤する場合で、会社が指導してもまったく改善されないようであれば、「解雇しても仕方ない」と判断される可能性が高いでしょう。
協調性のなさや反抗的態度についても、指導や注意を行い、それでも改善されないかどうかが、解雇が有効とされる判断ポイントとなります。
おわりに
試用期間であっても、雇用契約が成立しているため、簡単に解雇できると考えることはできません。安易な判断による解雇は避けたほうが無難です。解雇に踏み切る場合は、その理由に合理性・相当性があるか、慎重に検討したうえで行うようにしてください。
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