経営者が知っておくべき「解雇」のルール ③懲戒解雇

解雇

日本では労働者の権利保護の観点から、よほどの事情がない限り、会社が一方的に従業員を解雇することはできません。ただし、従業員が会社に重大な損害を与えたような場合には、「懲戒解雇」という方法があります。例えば下記のようなケースが当てはまります。

「従業員が傷害事件を起こして逮捕されてしまった」

「従業員が会社のお金を横領していた」

「従業員が恐喝や傷害とみなせるようなパワハラ行為を行った」

「何日も無断欠勤を続けており、連絡がつかない」

懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、就業規則に基づく懲戒のひとつとして行う解雇のことで、重大な違反行為をした労働者に対する罰として行われます。

従業員は会社の秩序を守る義務を負っているため、その義務に反して会社の秩序を著しく乱した場合、企業はその者に対して何らかの罰を与えることができ、その中で最も重い罰が「懲戒解雇」です。

懲戒解雇が有効となる条件

労働者にとって最も重いペナルティである「懲戒解雇」。

それが有効となるためには、企業にとって、かなり高いハードルがあります。具体的には、以下の3つを満たさなくてはなりません。

  1. 就業規則に懲戒解雇の根拠となる規定が定められていること
  2. 懲戒解雇の理由に合理性があること
  3. 社会的相当性があること

以下、それぞれについて詳しく見ていきます。

(1) 就業規則に懲戒解雇の根拠規定が定められていること

懲戒解雇をするためには、就業規則で「こういうことをしたら、解雇になりますよ」と、どのような場合に解雇される可能性があるのか、あらかじめ示しておく必要があります。

就業規則で定められていない理由で解雇した場合、無効となる裁判例も多いため、考えつく解雇事由はすべて列挙しておくべきです。網羅し切れない場合に備えて、「その他、やむを得ない事由があるとき」のような包括的な理由を加えておくとよいでしょう。

なお、就業規則は従業員がいつでも見られるような状態にしておく必要があり、そうなっていないと、解雇が無効になる場合もあるので注意してください。

(2) 懲戒解雇の理由に合理性があること

懲戒処分は従業員にとって最も重い処分なので、それほどの不利益を与えても仕方ないと思えるくらいの「合理的な理由」が必要となります。

合理的かどうかは、行為の性質、動機、会社に与えた損害の程度、結果の重大性など、さまざまな個別事情を考慮して判断されます。

(3) 社会的相当性があること

たとえ、解雇理由に合理性があると認められても、世間一般的な常識に照らし合わせて、「解雇にしてもやむを得ない (=相当である) 」と判断されなければ、懲戒解雇はできません。

例えば、過去の同様の事例とのバランスや、解雇理由と処分の重さのバランス、従業員側の事情などを考慮して、「解雇処分が重すぎないか (処分に相当性があるか) 」について判断することになります。

正しい手続きを踏むことが必要

懲戒解雇は、正しい手続きに基づいて行う必要があります。対象となる従業員に弁明の機会が与えられず、いきなり懲戒解雇にしたような場合は、正しい手続きを踏んでいるとはいえず、無効になる可能性があります。

おわりに

懲戒解雇は従業員とのあいだで労働トラブルに発展する可能性が高いため、法律的な観点や、裁判例などを参考にしながら、慎重に行う必要があります。

もし懲戒解雇の有効性が裁判で争われた場合、会社にとって、解雇の合理性、相当性が認められるハードルは相当高くなるものと予想されますので、その際は労働問題に強い専門家の力を借りることをおすすめします。

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