約30年ぶりに実現した、労働協約の「地域的拡張」

会社法

先日、茨城県内のすべての大型家電量販店で、今年4月から正社員の年間休日数が111日以上になることが報道されました。家電量販店3社の労使が結んだ労働協約が、同業他社にも適用される「地域的拡張」が実行されるためです。

日本では会社ごとに別々に「労働協約」が締結されるだけに留まるケースがほとんどで、今回のような「地域的拡張」は非常に珍しく、約30年ぶりの実現となります。

労働協約の「地域的拡張」とは?

労働協約の「地域的拡張」とは、簡単に説明すると、「ある会社の労働組合が会社と取り決めた労働条件が、同じ地域の同業他社の労働者にも一律に適用される」仕組みのことです。

冒頭で触れた茨城県内の大型家電量販店の場合、大手3社の労働組合が「正社員の年間の所定休日数を最低111日とする」という労働協約を会社と締結後、厚生労働大臣に「地域的拡張」の適用を求める申し立てを行い、決定されました。その結果、3社の労働協約が、茨城県内の大型家電量販店の正社員にも適用されることになったのです。

「地域的拡張」が認められるとどうなる?

「地域的拡張適用」が認められると、労働組合のない会社の職場にも労働協約が適用されることになります。さらに、「労働協約」に違反した場合は、労働基準監督署によって取り締まりの対象となります。

企業にもメリットがある

企業の壁を超えて労働条件の改善を実現する「地域的拡張」は、社会的価値のある制度ですが、企業側にとってはマイナスなのでは?と思われる方もいるかもしれません。

しかし、企業が発展していくためには、労働者の生産性を上げる必要があり、労働条件の改善はそれに資するものであることは間違いありません。労働条件が悪ければ業界としての人気が低下し、採用が難しくなるなどの弊害も起こり得ます。

そもそも「労働協約」は、労働社側と使用者側がお互いに意見交換を行い、健全な労使関係の結果として締結されるものです。「地域的拡張」によって、組合員ではない労働者の労働条件も引き上げられれば、業界としてのイメージも向上し、優秀な人材の獲得にも役立つでしょう。

おわりに

日本では「地域的拡張」のような企業横断型の仕組みが採用されるのは珍しく、今回の茨城県の事例は画期的なケースといえます。ただ、欧米型の雇用システムの導入が進む中、今後日本でも職業別・産業別の制度が発達していくかもしれず、「地域的拡張」の適用が増加に向かうのか注視していくべきかと思われます。

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