「パワハラ」に対する社会の意識は年々高まっています。その流れを受けてパワハラ防止法が施行され、中小企業でも2022年6月からパワハラ防止対策が義務化されます。
忙しいから、面倒だからと、パワハラ対策が後回しになっていませんか? 対策を怠り、実際にパワハラが起きてしまうと、会社の経営に悪影響が出て、さまざまな損害を被るリスクがあります。
例えば次のようなリスクが起こり得ます。
- 法的責任リスク
- 行政責任リスク
- 職場環境の悪化
- 人材流出リスク
- 企業イメージの低下
以下、順に見ていきましょう。
法的責任リスク
※ここでは会社が負う責任のみ取り上げ、パワハラ加害者本人の責任については、別コラムにて取り上げます。
(1) 使用者責任
従業員が仕事中に第三者に損害を与えた場合、使用者である会社が損害賠償責任を負うことがあり、それを「使用者責任」といいます。よって、従業員が職務遂行中にパワハラ行為をして、他の従業員に損害を与えた場合、会社は損害賠償責任を問われる可能性があります (民法715条) 。
(2) 安全配慮義務違反
会社は、従業員に対して、安全に働ける職場環境を維持するよう配慮する「安全配慮義務」を負っており、パワハラが起きないように配慮し、もしパワハラが起きた場合、改善する必要があります。これに違反すると債務不履行による損害賠償責任を問われる可能性があります (民法415条) 。
行政責任リスク
パワハラ防止法の成立により、防止措置を怠った場合、行政処分の対象となる可能性があります。
職場環境の悪化
パワハラが横行している会社では、当然、社内の雰囲気が悪くなり、社員も精神的にダメージを受けます。その結果、社員の働く意欲や生産性が低下する等の問題が発生します。
人材流出リスク
パワハラの被害を受けた社員は勤めづらくなり、退職するケースが大半です。優秀な社員も、パワハラを許しておくような会社に留まるよりは、転職の道を選ぶかもしれません。
企業イメージの低下
最近ではパワハラ被害者が、ネット上に企業の悪い評判を書き込むことが珍しくなく、それが拡散することで企業イメージは低下し、将来の採用活動に悪影響が出る可能性があります。また、パワハラ被害者が会社や加害者に対して訴訟を起こした場合、広く世間に報道されることで、社会的制裁を受ける事態も生じ得ます。
おわりに
上記のように、ひとたびパワハラが発生すると、企業に取り返しのつかないダメージを与える可能性があります。企業としては、パワハラ防止対策が義務化されたことを厄介な重荷と思わず、リスク・マネジメントの良い機会ととらえて、しっかりと対策を講じておきましょう。
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