今年6月までに施行が予定されている、「公益通報者保護法」の改正法。
事業者にさまざまな義務が課され、違反に対する罰金なども定められるなど、企業に大きな影響があると見込まれています。
「大企業しか関係ないよね?」と思っている経営者の方もいるかもしれませんが、実は、企業規模を問わず、すべての企業にとって重要な内容を含んでいる法律です。
今回は、公益通報者保護法について簡単に説明した後、改正法で何が変わり、大企業だけでなく中小企業も対応が必要な理由について説明します。
公益通報者保護法とは?
公益通報者保護法は、2006年に施行された比較的新しい法律です。
2000年代初頭、社会問題となった企業不祥事の多くが内部の社員による通報で発覚しましたが、その社員が解雇や減給など不利益な目に合うケースが相次ぎました。そのため、 通報したことで不当な目に合わないよう、通報者を保護するために制定されたのが、公益通報者保護法 です。
通報者の安全を保証することで通報を促進し、企業不祥事の防止や早期発見・是正につなげることを目指しています。
改正で何が変わった?
通報制度の活用度を高め、通報者がより安心して利用できるよう、さまざまな変更が加えられています。
主な改正法は次の3点です。
① 事業者の体制整備の義務化
通報を受け付ける窓口を作るなどの体制整備が義務化されました(従業員300名以下の企業は努力義務)。怠った場合は行政措置を受ける可能性があります。
また、受付業務を担当する人に守秘義務が課され、通報者を特定させる情報を漏らすなど、違反をした場合は刑事罰の対象になります。
② 外部の行政機関やマスコミへの通報が利用しやすくなる
通報対象の事実の範囲が拡大され、通報者が保護されるための要件が緩和されました。
③ 通報者の保護を強化する
改正前から、通報者の不利益な取り扱いは禁止されていましたが、通報により会社に損害が生じた場合に、会社から損害賠償請求をされる可能性がありました。そのため、改正法で、損害賠償責任が免除されることになりました。
中小企業も対応が必要なの?
改正法では、従業員数300人を超える企業に、内部通報制度の整備義務を課しています。そのため、中小企業には通報窓口を設置する義務はありません。
しかし、会社に通報窓口がない場合、会社の不正に気付いた授業員は、直接マスコミや行政機関に通報することが予想されます。 改正法では、マスコミ等への通報を利用しやすくなり、通報者の保護も強化しているため、現在、通報窓口を設置していない中小企業こそ、改正法の内容を注視すべきなのです。
社内不正がいきなり外部機関に告発されれば、場合によっては大々的に報道され、企業ブランドが大きく毀損されます。そのため、中小企業であっても、まずは内部通報による不正抑止や早期発見・対応が可能になるように、体制を整備することが望ましいと考えられます。
おわりに
以上のように、今回の改正法は、中小規模の企業にとっても無関係ではありません。
なお、具体的な内部通報体制の整備・運用については、消費者庁が公表している、「公益通報者保護法に基づき事業者がとるべき措置に関する指針」および「公益通報者保護法に基づく指針の解説」を参照してみてください。
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