少子化の進む日本では、育児と仕事の両立を支援する政策は必須といえます。そんな中、男女ともに安心して育児休業をとれるしくみを整備するため、育児・介護休業法が改正されました。2022年4月から順次施行されますので、具体的な改正の内容や、企業はどのような準備が必要なのか、ポイントを押さえておきましょう。
改正のポイント
(1) 「出生時育児休業」制度の創設
子どもが生まれた直後、女性は産後休業を最大8週間取得できますが、今回の改正法で、男性も子どもが生まれた後8週間以内に4週間 (28日間) まで育児休業が取得できる「出生時育児休業」制度が創設されました。
これにより、子育てのサポートが最も必要な時期に、男性が育児休業を取れるようになります。この休業は2回に分けて取得することができるので、4週間もまとめて休むのは難しいという男性でも、休みを取りやすい制度設計がなされています。
さらに、これまでは原則として、育児休業を取る1ヶ月前までに申し出る必要があったのですが、2週間前までに申し出ればよくなりました。また、労使協定の締結と労働者との個別合意がある場合、休業中に就業することも可能です。
(2) 育児休業制度の周知と取得意向の確認が義務化
本人もしくは配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対して、次の2点が義務化されました。
① 個別に育児に関する制度について知らせること
② 個別に育児休業を取得するか意向を確認すること
つまり、会社が本人に直接、「お子さんが生まれるなら、このような育児休業制度が利用できますよ」と説明するとともに、「育児休業を取得しますか?」と尋ねる必要があるということです。従業員が育児休業を取得しやすいように会社が積極的に協力していきましょう、という趣旨の制度といえます。
(3) 有期雇用労働者の要件を緩和
これまで、有期雇用労働者が育児休業を取得するには「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件がありましたが、これが廃止されました。
そのため、例えば1ヶ月前に入社したばかりの人でも育児休業を取得できるようになります。ただし、労使協定を締結した場合には「引き続き雇用された期間が1年未満である者」を対象外とすることができます。
(4) 育児休業取得状況の公表が義務化
常時雇用する労働者数が1000人を超える事業主に対し、育児休業取得の状況を公表することが義務付けられます。
企業は何をしておくべき?
今回の改正法で企業に求められる対応として、以下のことが挙げられます。
(1) 就業規則の改訂
これまでの育児・介護休業制度と変わった点について、就業規則に明記する必要があります。特に、労使協定が必要とされる「育児休業中の就業」や「有期雇用労働者の取得要件」に関しては忘れず盛り込みましょう。
(2) 職場環境の整備
せっかく制度が整備されても、休みを取得しやすい雰囲気が職場になければ、従業員側も利用を躊躇してしまいます。とくに中小企業では、人手不足のため、育児休業取得を推奨しない傾向にあるかもしれませんが、これを機に、属人化したタスクをなくすなど、社内のオペレーションを見直しておくとよいでしょう。
おわりに
今回の法改正は、男女ともに仕事と育児を両立しやすくするような職場環境の整備の推進を目的としたものです。従業員が気兼ねなく育児・介護休業に対応できるよう、日頃から社内のサポート体制を整えておきましょう。
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