「内部通報を受け付ける窓口を作ってみたものの、まったく通報がない」、「仕事の愚痴や、同僚の悪口など、対応に困る通報ばかり寄せられる」といった、内部通報制度の運用に関する悩みをよく耳にします。これから制度を作ろうと検討している会社も、そんな声を聞くと、「やっぱりやめようかな…」、と躊躇してしまうかもしれません。
今回は、利用度の高い内部通報制度を構築するにはどうしたよいか、気をつけたいポイントについて説明します。
使われにくい理由を探ろう
内部通報窓口を作っても通報件数が少ない場合は、「不正がないからだ」と安心するのではなく、使いにくい仕組みになっているのでは、と疑うべきでしょう。
従業員が使いにくさを感じる理由には、以下のようなものがあります。
① そもそも内部通報できることを知らない (忘れている)
② 大きな不正しか通報できないと思っている
③ 社内窓口しかないので、自分が通報されたことがバレてしまうのが不安
④ 通報しても揉み消されたり、解雇されたりするのではないかと不安
こうした観点に留意した制度設計をすることで、「内部通報制度」の有効性は高まるものと思われます。以下では、具体的な対策について考えてみましょう。
従業員への周知徹底を図ろう
制度の導入時だけ従業員に知らせたが、その後は何のアナウンスもしていない、なんてことはありませんか? 制度を気軽に利用してもらうためには、電子メールや社内ポスター、コンプライアンス研修や社内ミーティングなど、さまざまな機会に継続的に周知を行うことが大切です。
その際に、「安心して利用できる制度」であることを強調し、とくに①通報者の秘密は守られる点と、②通報者が不利益な扱いを受けることはない点を伝えるようにしましょう。
受付内容を制限しない
「悩み相談室」みたいになるのが心配で、通報内容を「会社のルールに違反する行為」や「法律に違反する行為」に限ってしまう会社もあるようですが、まったく通報がない場合は、いっそ「業務に関する悩み」にまで間口を広げてしまうのも一案です。通報者本人は意図していなくても、実は違法性のある問題だったことが発覚するケースもあるため、気軽に相談できる窓口として活用を促し、まずは制度を活性化させてみましょう。
通報に関する秘密保持を徹底する
誰が通報したか簡単に特定されたり、通報した内容が漏れやすかったりすれば、従業員が通報をためらうのは当然です。法律事務所など外部の機関が窓口であれば、秘密保持は守られやすいと思いますが、社内の担当者が窓口を務める場合は、秘密保持を徹底するよう注意しましょう。
具体的には、「通報者探し」を禁止することを定め、通報者に関する情報は最小限の関係者だけで共有するようにしましょう。
通報者の保護は絶対条件
「通報すると、いじめにあったり解雇されたりするのでは?」と不安で通報できないという声をよく聞きますが、通報者に対する不利益な取り扱いは法律で禁止されています。
それでも不安な人もいると思いますので、「匿名での通報」も受け入れるようにしましょう。
もっとも、匿名通報の場合、事実調査が困難になる等のデメリットがあります。そのため、「匿名通報の場合、十分な調査が難しくなり、事実が解明されない場合がある」ことを当人に説明しておく必要があります。
また、万が一、不利益な取り扱いをされてしまった場合に備えて、「不利益な取り扱いがされた場合の救済措置」や「不利益な取り扱いを行った者に対する懲戒処分」などを内部規定で定めておくとよいでしょう。
おわりに
せっかく内部通報制度を作っても、利用されなければ無駄になってしまいます。
利用されやすいポイントを押さえたうえで、効果的な制度の運用を目指しましょう。
コメント