何から手をつける? 初めての「内部通報制度」

内部通報

内部通報がきっかけで、会社の不祥事が明るみに出るケースが増えています。

最近の例では、日産のカルロス・ゴーン元会長の逮捕のきっかけも内部通報だったとして大きな話題となりました。

「内部通報制度」と聞くと何やら難しそうですが、要は、「社内で良くないことが起きていると知った従業員に、その情報を知らせてもらうことで、問題の早期解決を図る」ための制度です。不祥事対策に効果的だとして、これまで普及が遅れていた中小企業でも、徐々に導入が進んでいるようです。

では「内部通報制度」の導入を決めたとして、まず何から手をつければいいのでしょうか?

今回は「内部通報制度」導入の最初の一歩について説明します。

内部通報制度の導入、具体的に何をどうすればいい?

「内部通報制度」を導入する場合、具体的にはまず次のアクションを起こす必要があります。

  • 通報窓口を設置する
  • 設置したことを社内に広める
  • 対応フローの準備

以下、順番に確認していきましょう。

通報窓口を設置する

まずは、従業員が通報する先である「通報窓口」を設置しましょう。

窓口には社内のみ、社外のみ、両方に設置する場合の、3つの選択肢があります。

(1) 社内の通報窓口

総務担当者や人事担当者など、社内の従業員に通報窓口を担当させる方法があります。なお、担当者は経営陣から独立した人でなくてはなりません(経営陣が関与した不正防止のため)。

メリットとしては、社内の人材に任せるため手軽に始められ、コストを抑えられる点が挙げられます。反面、通報する側にとっては「もみ消されるのではないか」、「社内に情報が漏れるのではないか」と不安が大きいため、利用されにくいというデメリットがあります。

(2) 社外の通報窓口

社外、つまり法律事務所や民間の専門業者に窓口を委託する方法もあります。

秘密が守られ、公正に対処してもらえる安心感があるため、従業員側にとって使いやすい点がメリットです。デメリットはやはりコストがかかる点でしょう。

(3) 社内と社外、両方に窓口を設ける

社内と社外、両方に窓口を設ける方法もあります。従業員が利用しやすいほうを選べるため利用度が高まり、より情報を収集しやすくなるというメリットがあります。リソースが許すのであれば、両方に設置するのがベストだと考えられています。

社内に広める

制度を作ったら、社内全体に周知し、利用を促す必要があります。

導入したときだけでなく、その後も定期的に周知し、従業員に制度の存在をしっかり認識してもらいましょう。

イントラネット、社内報、小冊子、研修など、実施しやすい方法でいいと思います。周知内容としては下記のような項目が挙げられます。

  • 内部通報の重要性に関する経営トップのメッセージ
  • どのようなことを通報できるのか
  • 具体的な通報の方法 (通報先の電話番号やメールアドレスなど)
  • 必ず秘密が守られ、通報によって不利益な取り扱いはされないことを約束する

通報できる内容を限定するかどうかは会社によると思いますが、限定する場合は「会社のルールに違反する行為」、「職場環境を害する行為 (ハラスメントなど)」、「法律に違反する行為」を対象とする会社が多いようです。

なお、正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイト、派遣社員からも通報を受け付けるようにしましょう。

窓口担当者の準備

社内の担当者が通報窓口を務める場合、実際に通報があったときに、どのような流れで対応するか、対応フローのマニュアルを準備しておくと安心です。とくに以下の点に留意しておくとよいでしょう。

①匿名通報にも対応する (調査の必要上、できれば名乗ってもらう)

②早めに返信する (通報者を不安にさせないため)

③通報者・通報内容を外に漏らさない (秘密保持の徹底)

④通報者が解雇や減給といった、不利益な取り扱いをされないことを保証する

窓口担当者には細やかな対応が求められるため、負担が大きくなりすぎないよう配慮が必要です。

おわりに

内部通報制度の導入のようなコンプライアンスを強化する施策は、会社に直接利益をもたらすわけではないため、後回しにしがちかもしれません。しかし、長い目で見れば、必ず会社にとってプラスに働きます。

さらに詳しい制度運用について知りたい方は、消費者庁が2016年に公表した、「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」を参照してみてください。

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