広告表示の注意点〜「おとり広告」とは?

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回転寿司チェーン「スシロー」が、実際には多くの店舗で販売していなかった寿司メニューを取り扱っているかのようにテレビCMやウェブサイトで宣伝したとして、消費者庁は景品表示法違反を認定、再発防止を求める措置命令を出しました。

宣伝を行っているあいだ、店舗の9割以上で該当メニューを提供できていなかったとのことで、この実際には購入できない商品を購入できるかのように表示した行為が、景品表示法の「おとり広告」に当たると判断されました。

今回は、この「おとり広告」の概要について説明していきます。

おとり広告とは?

おとり広告とは、「実際には購入することができない商品やサービスであるにもかかわらず、購入できるかのように消費者を誤認させる表示」のことをいいます。景品表示法の表示に関する規制には、①「優良誤認表示」、②「有利誤認表示」、③「内閣総理大臣により指定された表示 (指定表示) 」の3つがあり、「おとり広告」はこのうち③の指定表示 の一つです。

(参照:消費者庁「おとり広告に関する表示」)

今回のスシローの場合、広告に載せたメニューを出せないと分かっていながら、それに魅力を感じた客がたくさん来れば売上増になることを見込んで宣伝してしまったのは明らかで、典型的な「おとり広告」と言えるでしょう。

なお、当該広告には「ご好評につき店舗により完売している場合がございます」や「売切御免」という但し書きがあったとのことですが、そもそも在庫が確保できていなかったので、こうした文句には「消費者をだます」意図が感じられます。

他の例で説明してみると、「キャンペーン期間中、人気商品●●がスペシャルプライス1,000円でご購入いただけます」と広告を打っていたのに、実際には●●の在庫がゼロであれば、「おとり広告」に該当します。

その際に、「在庫がなくなり次第、終了」とか「在庫がない場合もありますので、店頭にてご確認ください」などと但し書きをしていたとしても、そこにはスシローと同様に「早めに来店してもらえれば購入できますよ」のような、消費者をだます意図が読み取れますので、違反とみなされる可能性が高いでしょう。

なお、在庫はあるものの、数がかなり少ない場合は、その数をきちんと明記しなくてはなりません。

商品だけでなく、サービスに関しても「おとり広告」が行われることがあり、過去にはスマホの新料金プランを大々的に宣伝し、来店した客を利益率の高い別のプランに加入させるという携帯電話代理店の行いが、おとり広告に当たるとして話題になりました。

おとり広告をしたらどうなる?

「おとり広告」をした企業には、消費者庁より「措置命令」という行政処分が下されます。具体的には下記のような措置が命じられます。

  • 表示行為の差止め
  • 再発防止
  • 景品表示法違反であることを消費者に周知

なお、罰金は規定されていません

また、必要に応じて資料の提出を求められたり、立入検査が行われたりする場合もあります。

措置命令に違反した場合は?

措置命令をに従わなかった場合は、以下の罰則のいずれか、または両方を課される可能性があります。

  • 2年以下の懲役
  • 300万円以下の罰金 (法人は3億円以下)

おわりに

今回のスシローの件は、業界シェア1位の寿司チェーンの違反ということで消費者に与える影響が大きく、罰金がないとはいえ、企業イメージの大幅な低下は避けられません。また、1回目の違反で措置命令が出ることは珍しいため、過去にも広告表示に関する注意を受けていた可能性が指摘されています。

おとり広告に限らず、売上アップに熱が入り、つい大げさな広告表示を打ってしまう可能性は、どんな企業にも起こり得ます。景品表示法に関して、キャンペーン担当者だけでなく全社的な研修を行ったり、定期的に「広告表現の見直し」を実施したりする機会を設けておくことが重要でしょう。

(参照:消費者庁「「おとり広告に関する表示」等の運用基準」)

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